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【泣ける心霊現象】和服のおばあさん

埋めがてら「新耳袋」から転記。 
好きな話。 

20年近く前の事。 
女子大生の友達二人が、朝、バイト先に出勤すると夜逃げしており、呆然。 
気晴らしに、ある渓谷に行き、神社の前のベンチで色々な話をしていた。 

ふと見ると、和服姿で首から緑の帯のようなものを下げたお婆さんが 
お社を回って正面で拍手を打つ、を繰り返している。 
願掛けをしているのかなと思った。 
その様子をそれとはなく気にしながら話し込んでいると 
お婆さんが近づいてきて「なにかあったんですか?話を聞いてあげるから 
そばに座ってもいい?」と声を掛けてきた。 
実は今朝、と、話をすると「元気をだしなさいよ」と言って 
私はこの先の家に住むイタクラサキというんですよ、と名乗り 
自身のこんな話をしてくれた。 


嫁いでからというもの、随分と姑さんにいじめられた。 
その辛さで毎日泣きたかった。 
でもそんな時には、いつも起きなければいけない早朝五時よりも 
さらに三十分早く起きて、台所の電気をつけると、勝手口から出て 
真っ暗な中を駅に向かって、ただ一生懸命歩いたのだという。 
昔このあたりはほとんど家もなく、道のずっと先に始発電車を待つ駅の光だけが見えた。 
その小さな明かりに向かって歩く。 
光だけをたよりに歩く。するとやがて駅に着く。 
そこまで来ると、くるりときびすを返して元来た道のずっと先を見る。 
目の前には、今まで歩いてきた真っ暗な一本道。 
でもその途中にひとつだけ、ポッと小さな光がある。 
そこにきっと私だけの生きる道がある。 
私はそうやって生きてきたの。 
あなたたちにもきっと導いてくれる光があるわよ…。 


話を聞いていて、何だか元気が湧いてきた。 
二人で礼を言うと、ニッコリと笑ってくれた。 
「ああよかった。じゃあ私も帰るとするかね」 
と、お婆さんは立上り帰っていった。 

「いい顔したおばあちゃんだったね」 
立ち上がって帰ろうかと思ったが、あのお婆さんの顔をみて 
もっとちゃんとしたお礼が言いたくなった。 
たしかこの先にあるイタクラという家だと聞いた。 
「ちょっと寄ってみようか」ふたりはその先の道を歩いてみた。 
すると、白と黒の幕の張られた家が見え、弔問客も大勢見える。 
「まさかね」と家の前にさしかかった。 
"イタクラ家葬儀"の文字に体が止まった。 
受付で聞くと、イタクラサキさんの葬儀だという。 

「おばあちゃんのお知り合いですか?」と聞かれ、戸惑っていると、奥から声が聞こえた。 
「これから最後の献花となります。後から来られた方の為に道をお開け下さい」 


ざっと弔問客が割れて、一本の道が出来た。 
その先に、遺影が見えた。 

さっき"ああよかった"と笑ったときのおばあちゃんの顔がそこにあった。 

 

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